【横浜薬科大学】谷 英典 准教授の発見が「International Journal of Molecular Science」に掲載されました
2024.08.23
脂肪肝・肝線維症の進行を告げる長鎖ノンコーディングRNAの発見
「発表のポイント」
・脂肪肝および肝線維症において、発現量が急激に変化する新規の長鎖ノンコーディングRNA(注1)を特定
・Kcnq1ot1とRmstという2つの長鎖ノンコーディングRNAが、脂肪肝と肝線維症の両方で有意に減少していることを発見
・長鎖ノンコーディングRNAが肝疾患進行のバイオマーカー(注2)の開発に繋がる可能性を示唆
「発表概要」
横浜薬科大学 健康薬学科 生体防御学研究室 谷 英典 准教授、名古屋大学 医学部 消化器内科 本多 隆 講師、横山晋也 病院助教、武藤 久哲 研究員らの研究グループは、マウスの肝疾患モデルを用いて、代謝機能障害関連脂肪肝および肝線維症に関連する新たなバイオマーカーである長鎖ノンコーディングRNAを発見しました。この成果は、深刻化する肝疾患の診断や治療法開発に新たな道を開くものです。
「発表内容」
近年、肥満や生活習慣病の増加に伴い、脂肪肝や肝線維症が世界的な健康問題となっています。本研究では、これらの疾患に関わる新しいRNAの働きを明らかにしました。研究グループは、マウスにおいてKcnq1ot1とRmstと呼ばれる2つの長鎖ノンコーディングRNA(タンパク質を作らない遺伝子)に着目し、これらのRNAが、脂肪肝や肝線維症で著しく減少することを明らかにしました。この発見は、肝疾患の進行を早期に発見するための新しいバイオマーカーの開発につながる可能性があります。現在、肝疾患の診断は主に血液検査や画像診断に頼っていますが、これらの方法では初期段階での検出が困難です。Kcnq1ot1とRmstの発現レベルを測定することで、より早期かつ正確な診断が可能となります。これにより、治療の開始時期を早め、病気の進行を抑制できることが予想されます。さらに、これらの長鎖ノンコーディングRNAの機能をさらに詳しく調べることで、全く新しいアプローチの治療法開発や創薬につながる可能性があります。例えば、これらのRNAの発現を調節する医薬品の開発や、遺伝子治療(注3)の新たな標的として利用することが考えられます。
「発表雑誌」
雑誌名:「International Journal of Molecular Science」(オンライン版掲載日:2024年8月16日)
論文タイトル:Identification of two long noncoding RNAs, Kcnq1ot1 and Rmst, as biomarkers in chronic liver diseases in mice
著者:Shinya Yokoyama#, Hisanori Muto#, Takashi Honda, Yoichi Kurokawa, Hirotaka Ogawa, Riku Nakajima, Hiroki Kawashima, Hidenori Tani*
DOI番号:https://doi.org/10.3390/ijms25168927
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