第61回福岡第一高等学校および第53回第一薬科大学付属高等学校入学式総長告辞
2016.04.09
福岡第一高等学校第61回、第一薬科大学付属高等学校第53回の入学式を挙行致しましたところ、公私ご多用の中にも係わりませず、ご遠路のところ万障お繰り合わせ頂きまして多くの御来賓の皆様方、そして保護者の皆さま方のご臨席頂きまして、かくも厳粛かつ和やかに入学式を挙行できますことは、新入生のみなさんにおかれましては勿論のこと、学園関係者一同にとりましても、この上なく喜びでございますし、高い所からではございますが、衷心より厚く御礼申し上げます。
本年は学校法人都築学園創立六十周年の記念すべき年にあたっております。六十年前に掲げられた建立碑には、
天地万有のものみな絶対の真と存在の意義がある。
物は心にそって価値を生む。人は教育によって永遠に輝く。
福岡第一高等学校は、個性の伸展による人生練磨を校是とする。
青少年は、民族の力、文化の泉、一木一草一石にも建学の命をこめる。
昭和31年1月31日
創立者 都築賴助、都築貞枝
創立者は元福岡師範福岡教育大学で国語学国史学の泰年であられた都築賴助先生と昭和23年新訓6・3・3学訓施行の年、全国初、そして唯一の県立普通高校校長として抜擢され、数多の業績を残されました都築貞枝先生のお二人でいらっしゃいます。
両先生は、国立大学そして県立高校での長い教育経験中で、画一で均質なる教育、また一点の点数のみで進路や人生を左右されている多くの青少年の現状に深い疑問を抱かれ、自由で人それぞれの個性を伸ばせる学校を開きたいという情熱から公職を敢えて辞職し、福岡第一高等学校の創設へと奔走されました。
それから六十年の間に現在の都築学園グループは、北は札幌から埼玉、東京渋谷、新宿上野、御茶ノ水、池袋、立川、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、鹿児島の十六に亘る都道府県に幼児教育、初等教育、中等教育、高等教育の他に、幼稚園、保育園、小学校、中学校、高等学校、専門学校、短大、大学、大学院と各教育機関をネットワークし、医療系分野をはじめ経済系、福祉系、工業系、教育系の分野さらにはグローバル教育にわたって一貫した教育方針「個性の伸展による人生練磨」を実践して国内での充実発展に努めて参りました。
海外ではアメリカ ハーバード大学、ハワイ大学はじめ、イギリス オックスフォード大学、ケンブリッジ大学など世界トップクラスの名門大学や高校と提携を結び、学問交流、文化交流をはじめ交換留学を推進しております。
こうした国内そして海外への発展の源は“一源万流”である福岡第一高等学校そして続く第一薬科大学付属高等学校から始まりました。今日は渋谷の通信制の新入生もテレビ中継で式に参加しています。
両校の校名にいう“第一”とは、仏教でいう「第一主義」からとられたもので、オンリーワンの“個性”を表しております。
仏教の原君の仏典にはサンスクリット語で第一義説のことをパラマルタと表記されており、仏教の教えの中で最も尊い言葉として扱われております。
英語ではアイデンティティのアイがどこにあっても大文字で表記されるのと同じ扱いでございます。
親子でもDNAがそれぞれの違いを示しているように、生来、人は誰でも他の人にない優れた資質や才能、即ち個性を持っています。
それを教育によって伸ばし育てて、社会にとって必要とされる人、世界から必要とされる人に育てたいというのが本校の変わらぬ教育方針でございます。
それは学業のみでなく、クラブ活動やパラマ塾を通しても同じ考え方に立っています。本校から六十年にわたり色々の個性の違う多彩な人材を輩出して参りました。
ロンドンオリンピックやリオオリンピックにもヨットや馬術のアスリート達が次々と育っていっております。また同時に、土地柄を反映して、芸術や芸能界でも多くの先輩たちが活躍しています。
今や国民的歌手となった氷川きよしさんはパラマ塾二回生として芸能塾に入りました。所属学科は当時のインテリアデザインコースでした。高宮中学からインテリアデザイナーを志して入学したのですが、パラマで演歌の特任講師であった本間先生に出会い、その才能を見い出されて、三年間パラマ塾で演歌の特訓を受けて、プロデビューしました。入学するまでは将来歌手になろうとは思っていなかったそうです。
個性というのは、自分では当たり前と思っていることが多く、なかなか自覚しにくい所があります。
それは人の個性だけではありません。
皆さんの家や家族の個性、住んでいる町の個性、県の個性、そして国柄とその国の個性、アイデンティティは大切です。そうした優れた個性が全体のダイバーシティという多様性を補完しているからです。
言外はグローバルな時代で、インターネットでどこの情報も世界が共有する時代になっております。日本の個性、日本らしさ、日本的なことは外国の人の目によって発見されることが増えて参りました。
ユネスコの世界文化遺産が日本から初めて登録されたのは1993年の奈良の法隆寺でした。しかし、これはすんなりいった訳ではなく論戦をかもしたのです。欧米の文化遺産はそれまでも石づくりが主でしたが、法隆寺は木で作られています。聖徳太子によって創建され、すぐに消失してしまった為に本物ではない真正性がどうなのかということでしたが、同じ宮大工の手によって、全く同じものが再建されたことが記録に残されていて、世界遺産として認められることになりました。ヨーロッパが石であったのに対して、日本は木の文化です。ギリシャのパルテノン神殿はすでに廃墟となっていますが、法隆寺は名刹として1400年間も現役であることが特徴です。こうした違いがあって、世界は平等なのです。
また日本の特徴の一つは、老舗といわれる創業100年以上の企業が六万社以上全国にあり、200年、300年、1000年以上の長寿産業もあり、その数はダントツ世界一を誇り、他国の追随を許しません。
どうして日本はそういうことが可能なのでしょうか。皆様に考えてほしいと思います。新しくベンチャーで企業していくアメリカの方法とは違った個性(アイデンティティ)が日本にはあるのです。
武士道をはじめ、“道徳”の道の作る文化は日本の特色です。皆さんも習っている剣道、柔道、相撲道、空手道、合気道など武道八道に、華道、茶道、香道、書道などの文武両道と共に、日本のこころ、大和魂、和魂が大切に守られております。他に克つ前に己に克つ強さを求めています。
こうした世界的な視野から日本の個性を操守する必要を感じ、都築学園グループは創立六十年を記念して昨年八月に「日本文明研究所」を創設しました。所長は前東京都知事、作家の猪瀬直樹さんです。
皆さんも本校で自分の個性を磨きながら、それはまさに日本や世界に役立つ個性だということを夢や誇りに思いながら、一高生、薬付生として新たな出発をして下さい。
未来は皆さんの手に委ねられております。夢を諦めずに、欲張りましょう。
平成二十八年四月九日
学校法人 都築学園
福岡第一高等学校 第一薬科大学付属高等学校
校長 都築 仁子